新人マーケターに気に入った本を勝手にご紹介しながら現役コミュニケーションプランナー視点で語るmarugomeの本棚シリーズ。
今回は「本」を使ったブランディングについて、とてもいい本を見つけたのでご紹介したいと思います。
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本の逆襲
ブック・コーディネーターという肩書で「本」が活躍する領域をどんどんと広げていくお仕事をされている、numabooks(ヌマブックス)代表の内沼晋太郎さんの書籍です。
2013年に発行されたものですが、「本」や「本棚」というものがブランディングに有効であるという実体験にもとづいた気づきについて書かれています。
内沼さんのブック・コーディネート
内沼さんは下北沢にあるB&Bという本屋を経営していますが、ただの本屋さんではありません。
「本」業界でも話題になったビレッジバンガードの「覆面文庫本」や青山スパイラルカフェの「文庫本セット」など、本の中から伝えたいエッセンスを抽出し、その抽出されたエッセンスから本へ興味を持ってもらおうとする試みなどをされてきました。
「本」にまつわる様々なコンテンツやそれを軸にしたコミュニケーションをつくるお仕事と言えるかもしれません。
内沼さん自身が学生時代の頃にブランディングの勉強をしていたこともあってか、ただ「この本は素晴らしい本ですよ」というプロモーションではなく「本そのものに興味を持ってもらうためのコミュニケーション」をうまく構築されていて、その視点や考え方はマーケターにとって勉強になります。
本棚がブランディングのキーアイテムになる
僕がこの本を皆さんにおすすめしたい理由は
ブランディングの可能性が無限大だと気づいて欲しいから
ブランディングというと、まず最初に思い浮かぶのはCMクリエイティブではないでしょうか?
カルピスウォーターなどは、以前から清純派女優を起用し続けることで「カルピスが爽やかな飲み物だ」というイメージを上手く訴求できていますよね。
また今の時代だとスターバックスなどは、Instagramを始めとしたさまざまなWEBメディアを使ってお洒落な写真を多数掲載し続けることで、女子高生などトレンドに敏感な女性層に対するブランディングが上手く機能しています。
しかしこの書籍で出てくるブランディングのキーアイテムは「本棚」です。
例えば最近はカフェやアパレルショップの一角に「本棚」が設置されていて、お店のコンセプトに合わせた本がおしゃれにレイアウトされているケースを見かける機会が増えました。
この本棚を使ってブランディングが出来るのです。
- その本棚に何を置くのか
- その本棚に何を置かないのか
この選択で、お店に対するユーザーのイメージは大きく変わってきます。
例えばあなたがどこかのカフェに訪れたとします。
そのカフェの本棚に「スティーブ・ジョブズの伝記」がおいてあったら、なんだか洗練されたおしゃれなカフェに思えてきませんか?
逆にこの本棚に「ぐりとぐら」などの絵本がたくさん置いてあったら、子どもと一緒に来てもくつろげるアットホームなカフェだというイメージを持つでしょう。
ブランディングはCMなどのマス=不特定多数の大衆を相手にしたものばかりではなく、店舗に直接足を運んでくれたお客さんとの偶然の出会いの場にも活用していくべきものだし、コストをかけるべきものなのです。
こうした数少ない奇跡的な顧客接点を最高の時間にすることが素晴らしいブランディングになるということをマーケターとして頭に入れて欲しいと思います。
今回ご紹介している「本の逆襲」ではその顧客接点の場を「本棚」で作り上げていますが、これは本の様な「モノ」だけではなく、店舗スタッフの対応などの「サービス」もブランディングの大きな要素となり得ます。
顧客接点を「真実の瞬間」として徹底的に見直しを行い大きな成功をおさめたスカンジナビア航空のお話が有名です。
詳しい説明は割愛しますが、本当に簡単に。
当時危機的状況にあったスカンジナビア航空ですが、乗客と直接コミュニケーションを取る各スタッフに大幅な権限を与えたことでスタッフが自分で考え乗客のために動くようになり、顧客満足度が上がりました。
マーケターとして知っておくべきことなので、是非こちらも読んでみてください。
さいごに
学生時代、紙書籍と電子書籍についての対立を描いたドキュメンタリーをつくったりしていました。
当時は紙書籍が劣勢だという論調で見ていましたが、「ブランディングとしての本」という可能性を知った今、本の未来はとても可能性に満ち溢れていると感じています。
マーケターとして、この気づきは財産です。
世間で「オワコン」として見られているものも、活用次第では第一線で活躍する主戦力となり得ることを、新人マーケターの皆さんも覚えておいて欲しいと思います。
それでは。
Let’s studying..!!